大動脈解離の実態と経験録 
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written by Masatetu Akimoto

大動脈解離の実態と経験録 

更新日:2020年3月10日


2016年5月20日夕食時、今まで経験した事のない尋常ではない痛みを背中に感じ、その瞬間から全く人生が変わってしまう病体験をしました。


大動脈解離、発生状態によっては、命を落とす事も少なくないこの病気を自身の体験に合わせ、広く存在を知っていただくためにレポートいたします。



 
  1. 大動脈解離 病態

  2. Stanford A Stanford B

  3. 人工血管置換術

  4. ステントグラフト アプローチ術

  5. 大動脈解離で亡くなった有名人

 


大動脈解離 病態



大動脈解離とは、人間の一番太い血管である心臓から繋がっている大動脈の内幕が長軸方向に裂ける現象をいいます。急性心筋梗塞,急性肺動脈血栓塞 栓症とともに 3 大致死的循環器系疾患の 1 つに数えられ、発生頻度は、10 万人に 2〜4 人程度との報告があります。


血管が裂けると聞くと血管が切り裂かれるイメージを持ちますが、実際には大動脈の外膜、中膜、内膜といった3層構造の内幕に亀裂が生じ、中膜の中に血液が入り込んでしまい、本来の正常状態の血菅(真腔)とは別に解離された血管(偽腔)ができてしまう状態です。


真腔と偽腔

解離状態になると、真空内の3層より一枚薄い2層構造が生まれ、ここに圧力がかかると薄くなっている2層の部分が膨らみ破裂の危険性を伴います。

症状

突然、胸あるいは背中に棒で殴られたような激痛が起こり、病状の進展につれて痛みが胸から腹、さらに脚へと下向きに移っていきます。強い痛みに意識消失状態やショック状態となることも多くあります。


治療

収縮期血圧を100~120mmHg以下に保つことを目標に、十分な薬物療法が行なわれます。急性の大動脈解離や破裂の危険性が高い場合の手術では、裂け目がある部分の血管が人工血管に置き換えられますが、病状によって人工血管に交換する範囲は異なります。手術中は、手術の補助のため、超低体温循環法あるいは脳分離循環法という専門的な人工心肺操作が行われます。

筆者自身の状態は、極めて危険な状態で、命を確保する救命手術を要する発症となりました。


Stanford A Stanford B



大動脈解離は大動脈が裂ける場所によって2つに分類されます。上行大動脈(心臓を出てすぐの大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードA型、上行大動脈は裂けず、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるタイプがスタンフォードB型です。


上行大動脈に亀裂が生じるSTANFORD A型は、亀裂箇所だけに偽腔が生じるケースと、裂ける状態が著しい場合は大動脈全体に対し偽腔が拡大する場合があります。同じようにSTANFORD B型においても、下行大動脈亀裂部のみの偽腔と下行大動脈全体に偽腔が生じるケースがあります。


緊急手術(救命手術)が対象となるA型 温存治療で対処するB型温存治療で対処するB型

  1. A型は、心臓に向かって避けた場合、それが心臓に到達する前に、さらに発症して48時間以内に破裂を起こしやすいため、緊急手術が必要です。当該外科手術では、解離した大動脈をできるだけ広範囲に切除し、大動脈の壁の中間層と外層の間に形成された血流路を封鎖して、人工血管で大動脈を再建します。大動脈弁で逆流が起きている場合は、手術で修復するか人工弁と置き換えます。

  2. B型はA型に比べ、すぐには破裂しないことが多いため、薬と絶対安静の治療が行なわれます。しかしこのB型も破裂の兆候が認められたり、腹部内臓や下半身への血の流れが悪くなる場合は緊急の治療(手術、カテーテル治療)を必要とします。


筆者自身の状態は、急性のスタンフォードA型。

発症場所が心臓に近い部分で、心臓まで3cmのところで緊急手術は行われました。

さらに、状態は下行大動脈まで一気に亀裂が走り、まずは、救命手術を行い、状況を見て複数の手術を余儀なくされるものでした。


人工血管置換術


解離が起こった大動脈は、その状態において人工血管に取り替える必要があります。大動脈の箇所に合わせた人工血管が開発されていて、それに合わせた置換術が施されます。

耐久性は抜群であるが感染に弱い

人工血管は合成繊維のポリエステル(ダクロン)でできていて、抜群の耐久性を持っています。開胸または開腹手術による人工血管置換術は安全性が高く、その症例数も増加しています。しかし感染に対して弱いとされています。例えば歯科治療などの際には、人工血管が体内にあることを歯科医に告げてなくてはなりません。一旦、人工血管が感染した場合、治療は非常に困難で、人工血管を入れ替える手術が必要になる場合があります。


低体温手術法

胸部の人工血管置換術では、血流を遮断する必要があり、遮断している間も臓器への血流を保つために人工心肺を使用した体外循環を用います。場所によっては手術の手順のなかで、十分な血流を保つことができないこともあり、低体温法や臓器潅流のための特別な方法を用いたりすることもあります。


筆者に施された人工血管は心臓に密接する場所から上行大動脈のすべてを置換するもので、人工心肺を装着し、24℃以下に体温を下げた状態で10時間を超える手術となりました。


ステントグラフト アプローチ術


胸部大動脈の内、下行大動脈に対しては、より低侵襲なカテーテルを用いた胸部大動脈ステントグラフト治療の症例数が増えてきました。

痛んだ管を内側から補強する

ステントグラフトは形状記憶合金でできた骨組みに人工血管を覆ったものを細く畳んでカテーテル内にしまってあります。足の付け根に小さい切開を置き、そこから動脈内にカテーテルを通してステントグラフトを目的の位置にまで運び、そこで展開することで留置します。大動脈瘤の前後でステントグラフトが密着できる性状の良い大動脈部位が2-3cm以上あることが必要です。


ステンドグラフと内挿術
  1. 手術は一般的には全身麻酔で行います。多くの場合、足のつけねの動脈からステントグラフトを術部まで運んでゆきます。折りたたまれたステントグラフトは細く小さいのですが、硬いという欠点があります。造影剤を使用したCT映像で、身体の中を透視しながら、慎重に胸部や腹部の大動脈にまで運んでゆかなくてはなりません。

  2. 予定された位置で、ステントグラフトを広げます。状況によっては2つないし3つのステントグラフトをつなげてゆくこともあります。

筆者は、2028年8月までに4計度の手術を経験しましたが、そのうち2回目の弓部大動脈からの先に、4回目の手術では、腹部大動脈からのアプローチで下降大動脈にステントグラフとを内挿しました。




大動脈解離で亡くなった有名人

突然死を引き起こす「大動脈解離」 今まで多くの有名人がこの病に倒れ、そして多くの人々が命を落としてきました。


2009年 2月3日 死去 急性大動脈解離 享年77歳

泡坂妻夫 氏

<直木賞作家>


2013年 6月5日 死去 急性大動脈解離 享年57歳

塩屋俊 氏

<映画監督・俳優>


2013年 12月30日 死去 解離性大動脈瘤 享年65歳

大瀧詠一 氏

<ミュージシャン>


2015年 4月19日 死去 急性大動脈解離 享年89歳

西本裕行 氏

<映画監督・俳優>


2015年 7月13日 死去 急性大動脈解離 享年57歳

渡辺英樹 氏

<ミュージシャン C-C-B>


2017年 7月6日 死去 急性大動脈解離 享年65歳

中嶋 しゅう 氏

<俳優・演出家>


2017年 11月16日 死去 急性大動脈解離 享年57歳

鶴ひろみ 氏

<声優・女優・ナレーター>



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解離性大動脈瘤による大手術を決行 生還率3%をくぐり抜け生還するも後に死去

石原裕次郎 氏

<俳優>


大動脈解離Stanford A型による手術を受け、生還。 現在も活躍中

加藤茶 氏

<タレント>

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