【ネメシスの使者】 ギリシア神話に登場する「義憤」の女神、その正体とは
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written by Masatetu Akimoto

【ネメシスの使者】 ギリシア神話に登場する「義憤」の女神、その正体とは


                   *書評ではないのでネタバレはありません。

                   

 

 

この物語のどこが面白いかというと、


Point 驚きの物語創作量を誇る中山七里にして、その大き作品の中からミラーとなる作品を対比する。

死刑判決を免れた殺人犯たちの家族が次々に殺される事件。

現場に残された「義憤」を意味する「ネメシス」という文字。加害者家族への復讐なのか、司法への挑戦なのか、七里物語ではお馴染みの岬検事に渡瀬、古手川のコンビがその謎を追求します。


兎にも角にも中山七里となると、その作品量の多さに感嘆するわけですが、メインストリームになっているのは、真骨頂の猟奇殺人であるように思う。


しかし、御子柴礼司シリーズを中心に、司法の場を物語のテーマにする作品にも傑作は多い。


その司法をテーマにした作品の中でも人気作である「テミスの剣」

本作と同じようにギリシア神話の女神をタイトルに使ったこの作品との対比が、より深い物語の真相をあぶり出している。



それでは、まずは、作者紹介からいたしましょう。


中山七里(ナカヤマ・シチリ)

1961年、岐阜県生れ。2009年、『さよならドビュッシーで第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞。、48歳での小説家デビュー。この時のダブルノミネート作品が、連続殺人鬼カエル男』で同賞初の偉業。音楽ミステリー路線、ダークでシリアスなサスペンスや法律路線など幅広い作風の作品を手掛ける。


エレクトーン教師の妻の影響か、音楽ミステリーの質の高さは随一。



作品の中に、世界観ががらりと変わるどんでん返しが仕掛けられていることが多く、いつからか「どんでん返しの帝王」などと呼ばれるようになった。



∽∽∽∽ コメント ∽∽∽∽

「死刑廃止論」というテーマに基づいた殺人事件に挑む、お馴染み渡瀬刑事とその解決までの道程と、毎度の小気味良いどんでん返しと、七里節の作品ではありますが、裏テーマは、日本の司法システムの欠如。「テミスの剣」でも強く問題提起された司法のあり方も合わせ、七里エンタテインメントを楽しみたい。

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さて、心地よい登場人物を簡単に紹介しましょう。


渡瀬警部:本件事件を追う埼玉県警の敏腕刑事  古手川刑事:渡瀬の部下、幾つもの難事件を解決しているバディ

岬検事:東京地検 検事

軽部亮一死刑廃止論者の裁判官により死刑を免れた懲役囚

二宮圭吾:死刑廃止論者の裁判官により死刑を免れた懲役囚

横山順一郎:東京地検 事務官

速水翔市:川越少年刑務所 心理技官

相良美津男:千葉刑務所 懲役囚



ネメシス 「復讐」の女神を、「義憤」の女神と渡瀬刑事が気がついたときから、この物語の主題は殺人事件の解決ではなく、死刑制度に関わる司法のあり方を問う物語と移り進む。


残された加害者家族の苦しみやその後の生活の支障を描く物語は幾つかありますが、置き所のない正義をこの義憤と称して物語を進め、その後の七里節とは圧巻のまとめです。



Point 死刑廃止に動いた司法、解決できない怒りを抱えたまま終結した被害者遺族、はたまたそこに正義を打ち立てる義憤者、しかし、物語は別のレイヤーで動いていた。

「テミスの剣」では、警察、検察の相関から見る「正義」について問題定義され、事件は容疑者も含めどの立場においても追求できる正義はあるのか、女神テミスは剣を持って裁けるのかといった流れがベースにありましたが、「ネメシスの使者」は逆に事件の加害者、被害者という相関からの「正義」を司法になぞらえて女神ネメシスが成敗する構図となっています。しかして、その物語がどうクライマックスを迎えるかが見所です


だから、

まとめ 驚きの物語創作量を誇る中山七里にして、その大き作品の中からミラーとなる作品「テミスの剣」を対比する。


中山七里は、一里、二里、三里と全員で七人いると言われるほど、執筆力に超人的なスピードを持ちますが、本作も「翼がなくても」「秋山善吉工務店」「ワルツを踊ろう」「セイレーンの懺悔」「ドクター・デスの懺悔」と同年に発表されている。


中山七里の頭の構図はどうなっているのか、そしてそれぞれのストーリーラインの組み立て方は誰も知らない。



さて、この物語、あなたは読んでみたいと思いましたか?

 

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